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TROUT FISHING
ANGLERS VOICE
アングラーズボイス
佐藤 文紀
FUMINORI SATO
サクラマスの魅力、それは何と言っても釣れないこと。
「サカナ本来がもつ習性上、バイトを得ること自体が難しいとされるサクラマス。その難しさの向こうにある達成感を夢見て、多くのアングラーが足繁くフィールドに通う人気のターゲット。なかには5年以上、釣果に巡り合えないケースもあるほど。その簡単ではない難しさこそが、のめり込む理由のひとつだと話すのは佐藤文紀さん。 彼は一般アングラーだった30年前からサクラマスをねらい続け、21年前にTALEXレンズに出会ってからは、極めて良好な視界を釣果アップの必需品と位置づけた。その恩恵を授かるように、難しいサクラマスを長年コンスタントに釣り続けている。 その長い経験のなかで辿り着いた彼のフェイバリットカラーと、釣果に結びつけるために、どのような変化に注目しているのか?を訊いてみた。
サクラマスを狙うメインエリアは、どういう場所ですか?
僕の地元である宮城県石巻には、サクラマスが狙える川として有名な北上川が流れています。下流域は追波川と旧北上川に分かれていて、全国で最も早く解禁日(毎年1月20日)を迎えることから、追波川を中心に各地から多くの釣り人が訪れます。サクラマスは秋に迎える産卵期のために、春になると海から川に入ります。本州屈指の流程を誇る北上川では、春から夏にかけて200㎞以上も離れた盛岡あたりまで遡上します。 河川の地域や規模によって、遡上時期は前後しますが、おおむね海から上がってきたばかりの春頃には下流域、初夏には中流域での釣りが一般的となります。
サクラマス釣りの魅力について教えてください。
サクラマスの魅力は何と言っても釣れないことです(笑)。こう言うと誤解されるかもしれませんが、なかなか釣れないからこそ、釣れた時の感動に繋がっていることは間違いありません。なにせ「3年に1度釣れればいい」と言われる魚ですから、釣れた時の喜びは相当なものです。では、なぜそれほど釣れないかと言うと、川に入ったサクラマスは基本的に捕食行動を起こさないからです。サクラマスを釣るにはスプーンやミノーを用いて威嚇を誘うか、僅かに残っている捕食の衝動(海で食べていた名残り)を呼び覚まさなければなりません。魚を釣るために最も重要な要素である捕食行動を期待できない分、サクラマスを釣るのはとても難しいのです。
そんなに釣れないのによく続けていられますね(笑)
もちろん、それだけサクラマスというサカナの魅力が大きいのだと思います。突如竿がひったくられる衝撃にはじまり、その後の強烈なダッシュは、なかなか他の川魚では味わうことができません。うっすら桜色にも見える銀箔の鱗に包まれた砲弾のような魚体の美しさも格別です。またサクラマスは「ブルー&グリーン」、つまり青い海と緑の森を繋ぐ魚です。ヤマメの降海型として渓流域と大海を行き来する「旅する魚」というロマンもあります。たとえ3年に1度しか釣れないとしても、多くの釣り人がサクラマスに狂ってしまう気持ちが僕にはよくわかります。 一方で、サクラマス釣りを始めたけど釣れずにやめてしまう人が多いことも事実です。一度目の釣りで簡単に釣れてしまうラッキーな人もいれば、3年間続けていれば釣れるというものでもありませんから……。ただ、漫然とルアーを投げて巻いているだけの釣りでは、飽きてしまう傾向が強いと思います。大切なことは、どれだけ集中力を切らさず釣りを続けられるかどうか。そこでタレックスレンズの視界が重要になってくるんです。
どのような場面でタレックスレンズの視界が活躍するのでしょうか?
基本的に海から川に入ったサクラマスの行動は、上流に向かって遡上しているか、その途中で留まっているかのどちらかです。 遡上中のサクラマスは適した流れのスジに抗して泳いでいきますから、その流れのスジを見つけることが大切です。川は一様に流れているように見えて、実は流速の異なる流れのスジが複雑に絡み合っています。「適水勢」とも言いますが、サクラマスが好む流れのスジを見つけることが攻略の近道となります。 そのために、まずイーズグリーンは持っておくべきレンズカラーだと思います。水面に光る白い反射を抑えながらも、細やかなスジを情報として得られるため、自信をもってキャストし続けることができます。また、サクラマスを狙える川の多くは、春になると山の雪解け水(雪代)が入るのですが、イーズグリーンは、この雪代の白濁りとも相性が抜群です。雪代による流れのスジは間違いなくサクラマスが好むポイントのひとつです。それに、下流域を雪代が流れているということは、海からサクラマスの群れが新たに入ってくることも意味しています。河口部に集まってきたサクラマスは川に遡上するきっかけを待っていて、雪代はその重要なトリガーになるのです。川に入ったばかりのサクラマスは「フレッシュラン」と言って食い気も残っています。雪代に気づければ、それは絶好のチャンスであり、サクラマスに巡り合える確率もアップするというわけです。
居着きのようなサクラマスもいるのでしょうか?
新たな群れがやってきては通過する一方で、川の途中で留まっているサクラマスもいます。わかりやすい例は堰下。たとえ魚道があっても堰を越えるのは遡上魚にとってひとつの障壁ですから、雪代や雨による増水などのきっかけがくるまで、その下流部に留まることが多いのです。「居着き」というより、遡上のタイミングを待って待機している、というイメージです。 その場合、何もない所よりも、チャンネルやブレイク、ジャカゴ(石を網で包んだ護岸)、テトラ、倒木といった、水中にある変化に着くことが多いです。このようなエリアでは、グレー系の自然な視界にコントラスト性能がプラスされたトゥルービュースポーツが威力を発揮します。濁りの状態など水質を把握できる上に、水面下にある変化をシルエットとして現してくれます。ただでさえアタリが少ないこの釣りで、狙い所が絞れる視界はモチベーションキープに大いに役立ちます。
堰のようなエリア以外で、このレンズカラーが釣果に結びつくシーンとして初夏の中流域が挙げられます。下流域に比べて水深が浅く、地形変化も多い。時期的にも雪代がおさまり、透明度も上がるため、サクラマスが定位しそうなピンスポットを地形から読み取ることが出来ます。 太陽光がしっかり注ぐタイミングではトゥルービュースポーツ、朝夕のマズメや分厚い雲に覆われた曇りや雨ではイーズグリーンと、使い分けることで、少しでも可能性の高そうなピンスポットを集中的に攻めることができるでしょう。
流れのスジを狙うにしても、ストラクチャーを狙うにしても、目線より上にルアーを通すことや、背中越しに追い越さないことなど、釣るためのコツはいくつもありますが、それよりも「サクラマスはここにいる!」というピンポイントに対して確信のようなモノをもって、ルアーをどうアプローチするかを考えた方が釣果に結びつくと思います。
あとは水面に入射するラインをしっかり目で追うことも大切です。自分が操作しているルアーをイメージ通り、ピンポイントに送り込むことでヒット率も上がりますし、なにより漫然とルアーを投げているのとは違い、集中した釣りを続けることができるようになるのです。
難しいといわれるサクラマスを釣る最大のコツは、なかなか釣れない中でもパズルのピースのような情報を集めてイメージを膨らませ、集中力を保って釣りつづけることです。そのために必須なのが、情報を少しでも多く集められるタレックスのレンズを備えた偏光グラスであると僕は考えています。
佐藤 文紀 さとう ふみのり
ハタやソイ・アイナメなどを狙うロックフィッシュ界のパイオニアとして長年、第一線で活躍。テレビや雑誌・書籍等、そのフィールドワークは国内のみならず海外にも及ぶ。その一方、遡上系大型トラウトの釣りにも造詣が深く、ライフワークとして長年サクラマスを追い続けるトラウティストとしても活躍。豊富な経験から自身監修のサクラマスロッド等のプロダクトも手掛けている。サクラマス釣りもキャリア約30年に及び、川を通じて森と海の繋がり、ヤマメとサクラマスが織りなす奇跡の物語についても様々な切り口で発信をおこなっている。釣り具メーカー・プロズワン代表。
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