Scroll

SALT WATER FISHING

ANGLERS VOICE

アングラーズボイス

佐野 ヒロム

HIROMU SANO

TALEXレンズと共に経験を重ねることで、
見えてくるものがある。

海のビッグターゲットを追い求めるキャスティングゲームのトップランナー、佐野ヒロムさんに、偏光グラスに求める役割と、この釣りにおけるさまざまな場面での視覚の重要性についてお聞きした。

オフショアのキャスティングゲームにおける偏光グラスの必要性を教えてください。

この釣りの場合、なによりもまずは、目の保護のためですね。数十キロの魚とやり取りしますから。過去に、ものすごい力がかかったランディングの直前にルアーが外れて飛んできて、顔面に当たったことがあるんです。他の人がキャストしたルアーが頭に当たった時もあります。水中が見えるかどうかの前に、目を保護するために絶対必要な道具です。また、沖の釣りは、海面からの反射光がさまざまな方向から目に飛び込んできます。波があらゆる角度にギラギラと光を反射しますし、船も動きますからね。目に光を受け続けると疲れますし、目にも当然良くありません。だから僕は、できるだけ目を広く覆うフレームを使いたくて、今はDAIWA TLXシリーズを愛用しています。

釣りの最中は主に何を見ているのでしょうか?

船上では、乗船者全員で魚を探します。操船する船長は200度くらいの広い視野を前方に張り巡らせていますが、船の後方まではなかなか見られません。だから僕は、後方も含めて魚の気配を探します。ベイトが湧いてナブラになる一瞬、鳥が急に集まり出す瞬間、小さな跳ね、波紋など。その「一瞬」を目で捉えられるかが全てといっても過言ではありません。特にチャンスの少ない日は、その差が釣果に直結しますから、信頼できるレンズは不可欠です。

広い海の中で僅かな魚の気配を見つけるコツのようなものはありますか?

こればかりは経験による慣れとしか言いようがありません。長年やっているから目が学習しているのだと思います。プロ野球選手はボールの縫い目まで見えると言いますが、似たような感覚かもしれません。ただ、僕らの釣りはスポーツであると同時に、どこかハンティングの要素も含んでいます。だからこそ、自然と“狩猟本能”のようなものが働いている感覚があるんです。常に視野を広く保ちつつ、遠くと近くを瞬時に見分けながら、視界に現れるわずかな違和感を敏感に察知し、そこに照準を合わせていく感覚です。最初からこのような見方ができたわけではなく、TALEXレンズ越しに見つけた僅かな違和感を感じ取り、船を近づけて確かめる経験を、何度も何度も繰り返してきたからこそ身についた感覚かもしれません。

自分だけが見えている、なんてこともあるわけですね?

はい。たとえば僕には水面下でギラッと光る魚がよく見えますが、人によっては全然見えていないようなんです。でも、その場面を撮影した動画を後で確認してみると、やっぱりギラッと光っているわけです。しかも自分の目には、映像以上にくっきりと見えていた。そんな経験が何度かあります。水面にベイトが湧いている姿が見えなくても、水面下に狙っている魚そのものが変化として見える、これはかなり有利だと思います。魚自体が見えれば進行方向や動き方がわかり、先を見越してキャストすることもできます。

距離にして50〜80mほどの距離で魚を確認し、瞬時にタックルを選び、船の動きと風向きも計算して、一瞬の判断でキャストします。もちろん、揺れている船からですし、簡単ではありません。さらにキャストしたルアーを追ってくる魚も見ています。「出たけど食わなかった!」というケースがありますが、ルアーに出たことで初めて魚がいたと知るのか、出る前から魚がついていることを知るのかでは、内容は大きく変わってきます。前者は偶然、後者は確信。ルアーに出る前から魚が見えていれば、よりマッチした誘い方ができるわけですから。もちろんこの時、偏光レンズの性能が悪ければ、見えるものも見えません。また、状況に合ったレンズカラーを選ぶことが、とても大切になってきます。

「見る」ためのカラーセレクトを教えてください。

トゥルービューフォーカスとイーズグリーンの2つを使い分けています。強い光の時はトゥルービューフォーカス。朝夕のマズメ時や、曇りの日などのローライト時はイーズグリーンが抜群にいいですね。面白いことに、太陽が高くて日射しが強い時でもイーズグリーンのほうが見えることもあります。遠目の水平線上に雲がかかっていたり、少し黄砂が出て曇っていたりするときは、日射しが強くてもイーズグリーンを選ぶことがあります。反対に、暗い時でもトゥルービューフォーカスのほうがスッキリ見えることもあります。いずれにしても、レンズを複数持って使い分けることが大事です。状況に合わせてかけかえるだけで、見え方はだいぶ変わってきますよ。

魚がヒットした後は、何を見ているのでしょうか?

ラインを見て、魚の進む方向を確認します。また、海面を見れば、浅い所は波立ちますし、深い所は海面が穏やかになりますから、あらかじめ頭に入れておいた情報と目の前の状況を照らし合わせながら、海底の地形を読んで魚に対応していきます。水深が浅いところで横に走られると、岩などにラインが擦れて切れてしまいますから、時には船長に状況を伝えて船を回してもらいながら、力の具合も変えてファイトします。大型魚のファイトは闘牛や暴れ馬と一緒です。相手が大物であればあるほど、パワーばかりでは太刀打ちできません。状況を読み、手綱でいなすようにコントロールして寄せてくる感覚です。この時も多くは視覚頼みです。ラインの動きを見て、瞬時に判断していきます。

さまざまな場面でタレックスレンズの性能が役立っているわけですね。

はい。タレックスレンズには、とても助けられています。性能は間違いありません。唯一のリクエストを挙げるとすれば、海水の飛沫を自動で除去できるレンズがほしい(笑)。冗談のようで本気の話。沖の釣りではレンズに海水が付きやすく、これが視界を妨げる。もしそれを解消できるテクノロジーがあれば、さらに見える世界が広がると思います。
そして、僕が偏光グラスを使うのは海だけではありません。まったく逆のフィールドであるエリアトラウトでも重宝しています。ここでは遠近両用のラスターオレンジを愛用。極細のラインでノットを組む繊細な作業には、視力補正も重要です。
また、バイクにもタレックス。ハーレーに乗る時はトゥルービューフォーカスをかけて走ります。クラシックなジェットヘルにもよく似合うんですよ。

最後に、佐野さんにとってTALEXレンズとは?

僕の釣りは、視覚と判断の積み重ね。その「見えるかどうか」が、釣果を大きく左右する世界に身を置いてきたからこそ、タレックスレンズの価値を日々実感しています。ただ水中が見えるだけでなく、身体や頭への負荷を軽減し、一瞬のチャンスを確実にものにできる環境を整えてくれる──それがタレックスのレンズだと思っています。

佐野 ヒロム さの ひろむ

相模湾をホームに全国各地にキハダマグロやクロマグロ、ヒラマサ、GTなど大型魚を追う、キャスティングビッグゲームのトップランナー。豊富な経験に裏打ちされた理論とテクニックで、61kgのキハダや32kgのヒラマサなど、数々のドリームフィッシュを釣り上げる。豪快の中にある繊細な釣りと、常に全力の姿勢が多くのファンを惹きつける。メーカーのフィールドスタッフを多数務めるソルトウォータースポーツマン。