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HERA FISHING

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アングラーズボイス

棚網 久

HISASHI TANAAMI

目盛りの色を、より見やすくしてくれるレンズカラー

ウキの動きを頼りに水中の状態をイメージする、ヘラブナ釣り。 この釣りを、より楽しむために、常に新しいモノを取り入れ、自らのスキルアップに取り組むプロアングラー棚網 久さん。 彼は15年以上前からTALEXレンズの有効性に着目し、多くのレンズカラーを様々なシーンで使い込んできた一人。 どのようなシーンで、どのレンズカラーを使えば、もっと快適にウキを見続けることが出来るのか? 具体例を交えて解説いただいた。

ヘラブナ釣りにおける偏光グラスの重要性についてお話をお聞かせください。

ヘラブナ釣りでは早朝4時頃から日没直前まで、ずっと水面のウキを見ていることも普通です。これだけウキを凝視し続ける釣りって、なかなか他にありませんから、日中の紫外線対策も含めて、目の保護のためにも偏光グラスは必需品です。 その上で、ウキの目盛りの配色や周囲の色目に応じて適切なレンズカラーを選ぶことで、ヘラブナ釣りは格段にやりやすくなります。つまり、偏光グラスは釣りを十分に楽しむためには必須アイテムと言えるでしょう。

ヘラブナ釣りのウキって、細かな目盛りがつけられていて、とても特徴がありますよね。

ヘラブナ釣りのウキにある目盛りって、大きくても1目盛りが10㎜ほど、細かいものだと5㎜ぐらいなんですね。非常に繊細なウキの動きを見極めるための工夫です。配色は赤(濃いオレンジ)、黄緑、オレンジの組み合わせが一般的です。さらに目盛りと目盛りの間に黒帯があり、これが目盛りをくっきりと見やすくしています。 そして、ヘラブナ釣りでは「エサ落ち目盛り」という基準を設けます。2本のハリとオモリを付けた仕掛けを、エサが付いていない状態で入れた時、水面に接する目盛りの位置がエサ落ち目盛りです。わかりやすく言うと「エサが付いていない空っぽの状態」です。エサをつけて投入し、ここから1目盛りでも半目盛りでもウキが沈んでいれば、エサがまだ残っていることがわかります。 人によって、もちろんエサの付け方は違います。同じエサでも大きく付ければ、そのぶん沈みますし、小さく付ければあまり沈みません。エサを同じ大きさに付けられるようになると、たとえばウキのトップに10目盛りあったら、毎回8目盛りぐらいでピタッと止まるように調整することができます。水面上に2目盛り出た状態ですね。そこから少しずつエサが溶け落ちるのをウキの目盛りで感じながら、アタリが出た時にアワセを入れる、というわけです。

だとすれば、エサ落ち目盛りを見やすくしたいですね。

そうです。そこで多くの人は、オモリをハサミで細かく切ったりしながら、エサ落ち目盛りに一番見やすい色を持ってくるように調節します。それと同時に、エサが完全に付いた状態の目盛りも見やすくしたいんです。 たとえば赤が見やすいとして、エサ落ちのメモリを赤にします。エサを付けて仕掛けを投入してウキが馴染んだ時に、エサ落ち目盛りの4つ上の目盛りが水面に接するとしましょう。ならばその目盛りも赤にします。赤で始まり、エサが落ちて赤で終わるといった感じです。色目にこだわる人は、このように大事な目盛りが見やすくなるように配色を依頼してウキを作ってもらっています。

他に色目について、気にしなければならない点はありますか?

見やすい目盛りの色って、実は背景や季節によっても変わるんです。たとえば重要な目盛りを黄緑にしたとしましょう。いくら黄緑が自分にとって見やすい色だったとしても、初夏の野釣りだと背景の新緑がすごく映えているので、黄緑の目盛りが埋もれて見にくくなってしまうんです。これが秋になると逆に、対岸の葉が枯れてきますので、黄緑色の目盛りがとても目立って見やすくなります。 赤やオレンジ色などは、自然界にはあまりない色ですから、野釣りでは背景に左右されづらい色だと言えます。ところが釣り堀になると、対面に赤やオレンジのウェアを着た人が座ることもあるので、逆に見づらくなることがあります。僕はその時々で対応できるように、ウキの目盛りの配色を数パターン用意しています。釣り座に座った時点で最もよく見える配色を選べば、長時間ウキに集中できるようになります。

ウキの背景の色も考えて、レンズカラーを選ぶと見やすさが持続するんですね。

そうです。太陽の反射光によってもウキの見やすさは変わってきます。たとえば冬は太陽が少し低めですよね。だから逆光になると、よけいに眩しくて見づらいです。対して夏場は太陽が高くなりますから、上から強い日差しが降り注ぎます。太陽の照り返しは自分が座る方角によって刻々と変化します。大切なのは、眩しいかどうかだけでなく、反射光がウキのトップにどう影響するかも、よく観察することですね。 レンズカラーを選ぶポイントは、ウキの目盛りの配色・背景色・太陽光・水色。これらを考えた上で、自分が特にしっかり見たい目盛りの色を、より見やすくしてくれるレンズカラーを選ぶのがセオリーです。

多用しているレンズカラーを教えてください。

最近ではラスターオレンジを多用していますね。以前はアクションコパーを長く愛用していましたが、今はより明るく見えるラスターオレンジがお気に入りです。僕の場合、トップの目盛りの配色ではオレンジや赤を重要視することが多いので、オレンジ系のレンズを好んで使っています。タレックスのレンズは全体的に肉眼よりも輪郭が際立つのが特徴ですが、見たい対象物の色と同系色のレンズカラーで見ると、より一層際立つんです。たとえばグリーン系のレンズで山の稜線を見ると、とてもくっきり見えます。それと同じことだと思います。 イーズグリーンだと黄緑の目盛りが見やすくなりますし、アクションコパーだと赤系の目盛りがとても見やすくなります。なかでもラスターオレンジは、赤・オレンジ・黄緑の配色がどれもバランスよくハッキリして、色の際立ちに優れたヘラブナ釣りに最適なレンズだと思っています。

ほかにレンズカラーの使い分けはありますか?

基本的に、光量の強さによって適したレンズカラーは変わります。日差しの強い晴天時は、余分な光をしっかりカットしてくれるトゥルービュースポーツがとても自然に見えて快適です。ただ、雨や曇などのローライト時には少し暗く見えますから、そのタイミングではラスターオレンジやイーズグリーンなど明るめに見えるレンズカラーに変えるべきでしょう。少しでも見にくいと感じることは集中力の持続を妨げますから。 ただ、ウキの背景となる木々や水色が緑色の場所でイーズグリーンをかけると全体的に背景の緑色が際立ちすぎて、少しウキが見づらくなったりもします。山梨県の西湖のような溶岩地帯の湖なら、遠くの山以外は緑系の背景が少ないので、イーズグリーンがベストな選択だと思います。

野釣りの場合、水中の様子を見るためにも偏光グラスは必要ですよね?

はい。水深が深い所では魚探も使いますが、TALEXレンズなら、透明度の高い湖だと3mぐらいまでなら目視できるので、下がヘドロ質なのか砂利なのか、ミオ筋がどこか、どっちが深くてどっちが浅いのかなど。ときには水面下を泳ぐヘラブナの群れを探したりもできます。かなり精度の高い情報が得られるんです。この精度がとても大切で、水面下の情報があやふやだと、船を着けて竿を出して仕掛けを打たないとわかりません。それってものすごい時間の無駄ですよね。偏光グラス越しに自分の目で探せるのなら、それが一番手っ取り早いんです。

最後にヘラブナ釣りをしている人に伝えたいことはありますか?

ヘラブナ釣りでは若い世代を中心に、偏光グラスの重要性が理解されてきているように感じています。情報にも敏感ですから、だいぶ使用率も上がっていますよね。僕がオススメしたいのは、むしろ年配層です。いい偏光グラスがなかった頃からヘラブナ釣りを続けている世代の人たちに、タレックスレンズの良さをもっと伝えたいですね。 ウキや水中の見え方はもちろん、最初にお伝えしたように、釣りをした後の目の疲労感がまるで違ってきます。そのことも含めて、質の高い偏光グラスの良さを、もっと伝えていきたいですね。

棚網 久 たなあみ ひさし

オフィシャルブログ:club Proud

1955年生まれ、埼玉県在住。テレビ、ウェブ、雑誌などの出演に加え、企画監修でも活躍。G杯優勝経験あり、現在は審査委員長を務める。「club Proud」会長。がまかつ、サンライン等のフィールドインストラクター。