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AYU FISHING

ANGLERS VOICE

アングラーズボイス

有岡 只祐

TADASUKE ARIOKA

最も効率よく釣果につなげられる
そう確信したレンズカラー

全国の猛者が集まるダイワ鮎マスターズで2度の優勝経験をもつトップトーナメンター有岡 只祐さん。独自の“ゼロテンショ”の釣りを磨き続ける彼に、トーナメントで勝つために選んだレンズカラーと、そのレンズ越しに何を見て釣果につなげているのかを訊いてみた。

まず最初に、有岡さんにとって偏光グラスはどのような存在でしょうか。

変な話ですが、服を着るような感じです。あって当たり前の存在と言いますか。基本的に私のホームグラウンドである太平洋側の河川は北から南に流れます。ほとんどの川が南に向けて流れていきますので、常に南側にある太陽の光をまともに目に入れながら釣りをすることになるわけです。太陽が照り返す水面ってギラギラしてるでしょ。なによりも偏光グラスは、この反射を防いでくれる絶対に必要な道具です。また、川の石を見てアユの着き場を探すためにも必要不可欠です。石はアユがコケを食めば食むほど磨かれてツヤが出ますから、この「石色」を細かく見分けることで、その石を食んでいるアユの活性まで知ることができるんです。

石の色を見て、いいアユがいるかどうかを判断するのですね。

はい。石色を見ることはアユ釣りの一番の基本です。ただ、色の見え方には個人差があります。一概に「ツヤのある茶色がいい」と言っても、皆さんの目に見えている茶色って各々が違うはずなんです。赤っぽい茶色なのか白っぽい茶色なのか、同じ白でもパールがかった白なのか、ツヤなしの白なのか……など、みんな違うはずなんです。ですから大切なのは「自分の中に基準を作ること」です。偏光レンズってすごく種類があるでしょ。このなかで、自分に合ったレンズを選び、自分の脳の中が認識している「良い石色」と「実際の釣れ具合」を結びつける経験を積み重ねることが大切です。これまで私もさまざまなレンズを試してきました。その結果、私にとって今のところ最も認識と実際の誤差が少ないレンズカラーは、ラスターブラウンだとわかったんです。

アユ釣りにはトルゥービュースポーツを使われる方が多いと思いますが、有岡さんはラスターブラウンなのですね。

確かにトゥルービュースポーツは自然な色合いにコントラスト性能がプラスされているレンズカラーですから、多くの方が愛用していますよね。私の場合は石色に加えて石の輪郭や形状をくっきり見たいとも思っています。さらには川底の凹凸、起伏変化も重視しています。周囲より少しでも掘れ込んで谷になっている所に魚は多くいますから。掘れ込みの中にある良い色の石を見つけ、それがどのような形をしているのかを知るために、私の中では今のところラスターブラウンが一番合っているというわけです。繰り返しますが、大切なのは、自分の脳が感じる良いイメージです。トゥルービュースポーツで見る石色、ラスターブラウンで見る石色、ラスターオレンジで見る石色はそれぞれ微妙に異なりますが、「この石色にオトリを入れると釣れる」というイメージがピタリとハマるのは、私の場合ラスターブラウンなんです。

石色のほかに、よく見ているものはなんですか?

ラインと目印ですね。近場を釣る時は水中の石をよく見ます。一方、釣る距離が離れれば離れるほど、水中よりも目印やラインをよく見るようになっていきます。また、私が良くやるゼロテンション釣法でも、目印を見ることはとても重要です。ラスターブラウンは、特に赤色の目印がくっきりとよく見えます。目印は全部で4個つけていますが、最もアユの動きを感じやすいのは、水面に一番近い目印ですから、水面のぎらつきをしっかり抑えてくれる効果も必要です。

あらためて、有岡さんが得意とするゼロテンション釣法を解説いただけますか?

簡単に言えば、糸を張らず緩めずの状態にしてオトリを操作する釣り方です。糸を張ると、どうしてもアユは疲れやすくなります。散歩中の犬もリードを引っ張りすぎると逆に走ろうとするじゃないですか。アユも同じで糸を張りすぎると逆に走ろうとしますから、引っ張り合いになってしまいます。するとオトリが疲れてしまうわけです。糸を張らず緩めずにしてオトリの負担をなるべく減らしてやることで、長い時間弱らせずに元気な状態を保つ。それを突き詰めたのが、“ゼロテン釣法”というわけです。

体得するのも人に伝えるのも難しそうな釣法ですね。

張らず緩めずの状態を保つことが最も重要ですが、それを感覚で伝えるのは難しいですね。『手元に重さが伝わったら緩めてください』と言っても、重さの感じ方は人によってさまざまですから。また、竿の強さによっても感じ方は変わります。たとえば1㎜径の穂先と3㎜径の穂先では、1㎜径の繊細な穂先のほうが、張らず緩めずの状態に感じやすくなります。穂先が力を吸収してくれる分、張らず緩めずに感じられる範囲が増えるんです。たとえ同じ竿でも、人によって『重い』と感じられるグラム数は違いますよね。だから感覚で伝えるのは難しい。そのなかで唯一、どんな竿を使っていても、すべての人が共有できる基準があります。それが目印の動きです。

先ほど偏光グラスでよく見ているといった目印ですね。
具体的にはどのように見るのでしょうか。

注目するのは目印の回転の加減です。目印というのは、糸を張っていくと、ある段階で必ず回転します。目印の回転は、手元に重さが伝わるよりも早く、糸が張ったことを知らせてくれます。見やすい偏光グラスを通して目印が回転しないように確認しながら釣りをすることで、誰でも同じようにゼロテン釣法の基本である『張らず緩めずの状態』を作り出すことができます。意外に思われる方も多いのですが、目印の回転こそが一番大事なポイントです。オトリを引くと、一番最初に動くのはラインと目印です。その次に穂先が曲がります。手元に感じるのは最後なんです。こう考えると、アユを繊細にコントロールするために『目で見る情報』を意識することがどれだけ大切なのかわかるかと思います。

優勝された2023年の【鮎マスターズ】決勝の舞台は長良川(岐阜)。
有岡さんの地元の仁淀川(高知)とは石の大きさなど条件が大きく異なると思いますが、偏光グラスの使い方も変わってくるものでしょうか。

川によって偏光グラスの使い方は大きく変わります。高知県の川は石が小さく水面上にも出ていませんので、石よりも波など水面変化を見る場面が多くなります。水面の波の動きを偏光グラスで見ながら川底の凹凸をイメージします。対して長良川には大きな石がゴロゴロあり、水面上にもたくさん出ていますから、川底や石を見ながら周りよりも少し深いくぼみを探していくために偏光グラスを使います。

水面の波を注視する場合と、水中の川底を注視では、違いますか?

違いますね。結局、水面を見るということは水中をイメージするということです。『だいたいこんな感じかな?』と想像するわけです。でも長良川の場合、イメージではなくリアルに川底を見て釣ります。確実に川底の見える3〜4mぐらいまで近づいて、イメージではなくリアルに地形を見て釣りをします。逆に高知の川は凹凸が少なく真っ平に近いので、近づきすぎるとアユが逃げてしまいます。この場合は距離を取って、水面変化を見ながら川底が少しでもくぼんでいる場所をイメージで探す釣りになります。

どちらの川でも有岡さんはラスターブラウンですか?

ラスターブラウンオンリーです。とにかく私の目に合っていて、石の輪郭が見やすい。ラスターオレンジやアクションコパーも石の輪郭は見やすいのですが、磨かれた石のツヤ加減を判断するには色合いが少し邪魔というか。私にとってラスターブラウンは、色合い・明るさ・偏光度、この3つのバランスがちょうど良く、『釣れる場所』が目に見える最高のレンズカラーです。

愛用のラスターブラウンと組み合わせているフレームについて教えてください。

フレームは、私がプロデュースしたダイワのTLX012。高いフィット感と横方向の視界が広いのが特徴です。アユ釣りの場合、縦よりも横方向に視線を動かす機会が多いので、TALEX8カーブレンズによる視野の広さには、かなり助けられています。あと、なんと言っても圧倒的に軽いので疲れない。これも偏光グラスにとってとても大切な長所だと思っています。

レンズカラーの話に戻りますと、ラスターブラウンで感じてきたのは、使い込むうちに少しずつジグソーパズルが組み上がっていくイメージ。『ああ、こういうことなのか』と。この石色でこういう輪郭だから釣れるのかと、少しずつ見え方と釣れ方が結びついていく感覚は、とても新鮮なものでした。同じブラウンと言ってもメーカーによって全部違います。私にとってTALEXのラスターブラウンは「やっと出会えた」唯一無二のレンズカラーなんです。

有岡 只祐 ありおか ただすけ

1975年生まれ。高知県在住。2015年、2023年「ダイワ鮎マスターズ」優勝。仁淀川や奈半利川、安田川、四万十川など地元高知県の中心に活躍。オトリを極力疲れさせないゼロテンションの釣りを得意とし、地元河川と対照的な長良川などでも抜群の強さを誇る。YouTubeチャンネル「有岡只祐の有りのまま茄子がまま」で日々の活動を発信。明るいキャラクターで幅広い層からの支持を集めている。